米ディズニー『くまのプーさん』の原作『クマのプーさん』は、イギリス児童文学の宝

東京ディズニーランドに『プーさんのハニーハント』ができたのは2000年のことです。以来このアトラクションは待ち時間が長いことで知られており、絶大な人気を誇っています。 このアトラクションのもとになっているのは、もちろんディズニーのアニメ『くまのプーさん』ですが、その原作名を日本では『クマのプーさん』と表記しています。 そこにはイギリス児童文学の宝とも言われる原作『クマのプーさん』への敬意が込められているようです。

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原作とその背景

世界中で愛されているプーさんは、イギリスの作家A.A.ミルン(アラン・アレグザンダー・ミルン)によってこの世に誕生しました。ディズニーのアニメ映画『くまのプーさん』は、ミルンの著書『クマのプーさん』『プー横丁にたった家』からイメージを得て制作されています。

プーさんの絵が登場したのもこの本からで、挿し絵担当のイラストレーター、E.H.シェパード(アーネスト・ハワード・シェパード)の手による味わい深くて愛らしいキャラクターたちが物語の世界観に大きな影響を及ぼしました。

 

A.A.ミルンは愛する息子クリストファー・ロビン・ミルンのために『クマのプーさん』書いた作品と言われており、キャラクターたちのほとんどは、幼いクリストファーが大切にしていたぬいぐるみがモデルとなっています。また物語の中で彼らが住んでいる”100エーカーの森”は、ロンドン郊外の名所アッシュダウン・フォレストをモデルにしたとされており、現在でも「プーさんの棒投げ橋」等の人気スポットがあり、別名「クリストファー・ロビンの森」とも呼ばれています。

ちなみに面積で100エーカーというと東京ドーム約8.5個分ですから、プーさんたちが活躍した森はかなりの広さです。

ぬいぐるみたちの中でクリストファー・ロビンの最もお気に入りだったテディ・ベアのぬいぐるみ「エドワード」は彼が1歳の時に買ってもらったものでした。5歳の時に両親に連れられて初めて訪れたロンドン動物園で、クリストファーは「ウイニー」と名付けられたクマに出会います。ウイニーは人に慣れていて、すり寄って挨拶したりすることで有名な人気者でした。

その後クリストファーは、自分のテディ・ベアの名前を「ウイニー・ザ・プー」と改名しました。プーという名前の方は、ロンドン郊外の湖で出会った白鳥の名前からとりました。これがそのまま『Winnie-the-Pooh』という題名に使われたわけですから、世界中に愛されるプーさんの名付け親はクリストファー・ロビンということになります。

現在もニューヨーク公共図書館に行くと、展示されているぬいぐるみたちが当時の姿のままに出迎えてくれます。

『クマのプーさん/プー横丁にたった家』の内容とは

詩的で情緒豊かで、ウイットに富んだ『クマのプーさん』の世界。そのあらすじを、章の順に従って簡単に紹介します。

クマのプーさん』(1926年)

第1章 風船で空を飛ぶ

はちみつが大好きなプーは、高い木の上にハチの巣を見つけます。クリストファー・ロビンから風船を借りたプーは、それにつかまってハチの巣まで飛んでいきましたが、それは残念ながらミツバチの巣ではありませんでした。

プーはどうやって地面に降りようか悩んだ末、クリストファーに頼んで鉄砲で風船を撃ってもらい、無事に地面に落っこちました。

第2章 ウサギの穴にはまって出られなくなる

友達のラビットの家を訪問したプーは、ラビットの家のパンを全部食べ尽くし、満腹になったので帰ろうとします。ところが食べ過ぎのおなかがつかえて穴にはまり、そのまま動けなくなってしまいました。

第4章 イーヨーがしっぽを無くす

ロバのイーヨーがしっぽをなくして塞ぎ込んでいるのを見て、しっぽを探し回っていたプーは、フクロウの家の玄関の呼び鈴にしっぽが使われているのを発見します。

第5章 ヘファランプを探す

プーとピグレットは、謎の生き物「ヘファランプ」を探しに出かけます。途中で怪しい足跡を発見し、

第6章 イーヨーの誕生日

イーヨーは、自分の誕生日なのに誰からも祝ってもらえずに塞ぎ込んでいます。プーははちみつの入った壺を、ピグレットは風船をそれぞれプレゼントしようと持ち寄りますが、プーは途中ではちみつを全部食べてしまい、ピグレットは転んで風船を割ってしまいます。

空っぽのはちみつ壺と割れた風船をもらったイーヨーは、壺の中に風船が入るのをたいそう面白がり、出し入れするのに夢中になるのでした。

第7章 カンガとルー現る

100エーカーの森にカンガルーの親子のカンガとルーがやってきました。知らないうちに住み着いてしまった親子に不満を持ったラビットは、プーとピグレットに手伝わせ、まだ小さいルーを誘拐する計画を立てます。

プーがルーを連れ去り、ピグレットがルーの身代わりになりました。でもカンガは全く気付かず、ピグレットを水風呂に入れたり、いつも通りに世話を焼いたりしています。

また、ラビットは誘拐してきたルーに情が移ってしまい・・・。

第8章 プー、ノースポールを発見する

ある日クリストファー・ロビンの提案で、森のみんなでノースポール(北極点)を探しに行くことになりました。でも本当はクリストファーを含め誰も、ノースポールが何なのかを知りません。

でも途中で川に流されたルーを、プーは道に落ちていた棒切れを使って助けます。その棒切れを見たクリストファーは言います。「それこそがノースポールだ」。

プーはノースポールを発見した功績により、みんなから称賛されたのでした。

第9章 プー、親友を助ける

大雨で洪水となった森で、怖くなったピグレットは空き瓶に「助けて」と書いた紙を入れて流します。それを拾ったプーは字が読めないので、壺をボート代わりに、クリストファーのところまでやってきます。

プーはクリストファーのこうもり傘をさかさまに浮かべてボートにすることを思いつき、2人はそれに乗ってピグレットの救助に向かったのでした。

第10章 プーの祝賀会

ピグレットを助けた功績により、プーはクリストファーの主催で祝賀会を開いてもらい、鉛筆のセットをプレゼントされました。

プーさんの物語は、登場するキャラクター全員が子どもの世界の住人であるというところに独特の面白さがあります。言葉や文字や言い回し、それに考え方など、どれも拙いままなのですが、みんな真剣に悩んだり、喜んだりしています。大人から見るとばかばかしいように見えることであっても、彼らは至って真面目で一所懸命です。

クマのプーさん』が刊行された2年後には、続編となる『プー横丁にたった家』が発表されました。

プー横丁にたった家』(1928年)

第1章 プー横丁に家をたてる

雪の降る寒い日に、プーとピグレットはイーヨーのための家をたててあげることにしました。でも2人が建てたその家に使った材料は、なんと・・・。

第2章 虎の子ティガー現る

ある晩プーの家に迷い込んできたティガーという名の虎の子どもは、プーがはちみつを食べさせようとしても食べず、森の仲間たちが勧める様々な食べ物に対しても興味を示しません。でも最後に訪れたカンガの家で、ルー用の麦芽エキスが好物であることが判明し、全員でホッとするのでした。

第3章 ヘファランプに遭遇する

プーとピグレットは前回同様、謎の生き物「ヘファランプ」を探していました。そこで、落とし穴を掘ってヘファランプを捕まえることにしましたが、誤ってその落とし穴に落ちてしまいます。

心配して穴を見に来たクリストファーが声をかけたのですが、穴の中にいたピグレットはそれを「ヘファランプ」の声と勘違いし、震え上がります。

第4章 ティガー、木に登る

やんちゃなティガーはルーと遊んでいる時に、見栄を張って高い木の上に登ってしまいます。ルーは下りられましたが、ティガーは怖くて下りられません。心配してみんなが集まった所で、クリストファーの提案により、みんなで彼の上着を広げて持ち、そこに着地させることになりました。

計画が成功してティガーは無事に地面に降りることができましたが、イーヨーは落ちてきたティガーの下敷きになりました。

第5章 クリストファーの家の貼り紙

ある日森のみんなは、クリストファーの家の前に彼が書いたと思しき貼り紙を発見し、頭を捻ります。その貼り紙には「外出 忙しい すぐ帰る」と書いてあったのですが、綴りが違っていたため「がいしつ いそがし すぎかえる」と読めたのです。

博識のフクロウは「”すぎかえる”は草食動物の一種だ」とみんなに教えます。

でも真相は、学校へ通うようになったクリストファーがこれまでよりも忙しくなってしまったということでした。

第6章 イーヨーとティガーが言い争う

川を流れてきたイーヨーは、ティガーに突き飛ばされて落ちたと言い張ります。喧嘩になった両者の間にクリストファーが入りますが、らちがあきません。プーは「橋の上から棒を投げて速く流れた方が勝ち」という棒投げゲームで決着をつけることを提案し・・・。

第7章 ティガーにお灸をすえる

ティガーのやんちゃぶりに痺れを切らしたラビットは、プーたちと相談した結果、ティガーを森の奥に連れ出して置き去りにするという計画を立てます。でも森の中でラビットたちは、自分たちが迷子になってしまいます。彼らを助けたのは、置き去りにされてお灸をすえられるはずだったティガーでした。

第8章 ピグレット、大活躍する

森が大嵐になり、プーとピグレットは遊びに訪れていたフクロウの家が倒壊して外へ出られなくなってしまいます。体の小さいピグレットは助けを呼びに行くために、勇気を振り絞ってロープを使った脱出を試みるのでした。

第9章 ピグレット、勇気を出す

大嵐で家を失ったフクロウのために、みんなで新しい家を探すことになりました。ところがイーヨーが「いい空き家があった」と見つけてきた家は、なんとピグレットの家でした。ピグレットはまたもや勇気を振り絞り、フクロウにその家を譲ることにしました。

第10章

学校へ通うようになったクリストファーは、以前の様にみんなと遊ぶことができなくなりました。森の仲間たちは会議を開き、これまでの感謝とともに、彼らなりの決意をしたためた「決議文」をクリストファーに渡します。

そして彼が決議文を読んでいる間に、一人また一人とその場を去ってゆき、最後にはプーだけがその場に残ったのでした。

プーさんや仲間たちとクリストファー・ロビンとの楽しい生活は、クリストファーが少しだけ大人になったことで、終わりを迎えます。それは同時に、作品としての『クマのプーさん』が終了することでもありました。

子どもの時間の終わりを、きちんとしたかたちで後味良く終わらせたところに、この作品の名作たる所以があります。児童書としての価値以上のものがあるとして、高く評価され続けているのです。

楽しい仲間たちの様子が、時に美しい詩とともに語られた、子どもの夢そのもののようなワクワクするプーさんの世界は、子どもたちを虜にし、大人たちをも魅了しました。その魅力は現在でも全く色あせることがなく、世界中に広まり続けています。


A.A.ミルンが書いたプーさんに関する本は2冊の物語本と2冊の詩集が出版されていますが、全部まとめて読みたい人には『クマのプーさん全集 おはなしと詩』という豪華本がおススメです。

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