【あらすじ】ディズニーの出世作『白雪姫』のこわ~い原作はあまり知られていないらしい・・・

ディズニー社が制作した初めての長編アニメーション映画は『白雪姫』でした。同時にこの作品は、世界初の長編カラーアニメーション映画でもありました。1937年12月21日に公開されたこの作品は6000万ドルという興行収入を生む大ヒットとなりました。

ディズニー本社(カリフォルニア)にはTeam Disney Buildingが建てられており、七人のこびとが屋根を支えています。これは言うまでもなく「ディズニー社があるのは『白雪姫と七人のこびと』のおかげ」という想いが込められています。

ディズニーの『白雪姫』がヒットした理由はいろいろありますが、何よりもまず、かなり残酷な要素も含んだおとぎ話を、子供に安心して観せられる夢と希望の物語に作り替えたことです。

現在では《白雪姫=ディズニー》というほどイメージが定着していますが、原作の『白雪姫』はもともとドイツに古くから伝わる民話がもとになっています。最初に書物にまとめたのはグリム兄弟で、初版本は1812年に出版されました。

古い民話は難しい言葉や子ども向けでない残酷な内容を含むことも多かったので、当初のグリム童話は少なくとも子ども向けに書かれたものではありませんでした。そのため批判を受けたり売れなかったりして、その都度内容が少しずつ子供向けに変更されていったと言われています。

原作の『白雪姫』はどのような話だったのでしょうか。その内容を簡単に紹介します。

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嫉妬深い継母に命を狙われる白雪姫

昔々ある国の女王が、雪のように白い肌で血のように赤い頬、そして黒檀のように黒い髪を持つ美しい赤ん坊を産みました。赤ん坊は白雪姫と名付けられました。ところが女王はそのあとすぐに亡くなってしまいました。

それから1年ぐらいして、王様は新しいお妃を女王として迎えました。新しい女王は美しい人でしたが、うぬぼれが強くてわがままで嫉妬深い人でした。

女王は不思議な鏡を持っており、いつもその鏡に向かって尋ねていました。

「鏡や鏡、この国で誰が一番美しいか言っておくれ」

すると鏡はいつもこう答えました。

「女王様が一番美しい」

それを聞いて女王は安心するのでした。

ところが白雪姫がちょうど七歳になったときのことです。女王はいつものように鏡に向かって尋ねました。ところが鏡の答えは、いつもとは違うものでした。

「ここでは女王様が一番美しい。でも白雪姫はその千倍も美しい」

女王は逆上しました。そしてその日から白雪姫をいじめるようになり、とうとうある日、一人の狩人を呼びつけてこう命令しました。

「白雪姫を森へ連れていき、殺してなさい。証拠としてその血をハンカチにつけて持ち帰るように」

狩人は命令のままに白雪姫を森へ連れて行きましたが、泣きながら命乞いをする白雪姫を殺すことができず、代わりにイノシシの子を殺してその血をハンカチにつけて持ち帰りました。女王はその血を見て満足しました。

自分が一番美しくなければ我慢できない嫉妬深い継母によって、命を狙われた白雪姫。この時彼女はなんと七歳になったばかりです。七歳の娘に嫉妬する継母というのは劣悪ですが、グリムの初期の版では継母ではなく実母だったようです。実母による実子の虐待話は子どもに悪影響を及ぼす、という世の批判を受けて、グリムは途中の版から継母に書き換えたと言われています。

また、「ハンカチに血をつけて・・・」の部分は、別の版では「肝を取ってきて・・・」に変わっており、狩人がイノシシの肝を持って帰ると、それを継母が白雪姫のものだと思い、喜んで食べるという話になっているものもあります。

何度でも騙される無垢な白雪姫

白雪姫は森の奥深くに逃げて、さまよい続け、しまいに一軒の小さな家に辿り着きます。その家は森に棲む七人のこびとたちの家でした。

白雪姫をすっかり気に入ったこびとたちは、継母から殺されそうになって逃げてきたという話を聞いたこびとたちは、「家の中の仕事をやってくれるなら」という条件で、白雪姫をこの家に住まわせることにしました。

そのころ女王は、白雪姫がいなくなったことを喜んでいました。ところが鏡は「七人の小人の家にいる白雪姫が一番美しい」と言います。狩人が嘘をついたことに気づいた女王は、森の奥にあるこびとたちの家を探し出すと、行商人に変装して、白雪姫が一人の時を見計らって家のドアをノックしました。

「女王が命を狙いに来るかもしれないので誰も家に入れないように」と白雪姫はこびとから言われていたのですが、正直そうな行商人だから大丈夫だろうと考え、変装した女王を家に入れます。そして、売り物の締め紐で首を締められ窒息してしまいます。夕暮れ時にこびとたちが帰ってきて絞め紐を切って助けていなかったら、白雪姫は死んでしまっていたでしょう。息を吹き返した白雪姫から話を聞いたこびとたちは「私たちが一緒にいない時は、どんな人でも家に入れたりしてはいけない」と白雪姫に注意をするのでした。

ところが、鏡を通じて白雪姫がまだ生きているということを知った女王は、今度は老婆に変装し、毒を塗った櫛(くし)を持って白雪姫のところへやってきます。美しい櫛を見せられた白雪姫はそれが欲しくなり、老婆を家へ入れてしまいます。そしてまんまと毒の櫛を髪に刺されて倒れてしまいました。

帰ってきたこびとが櫛に気づき、それを抜いてもらって一命を取り留めましたが、女王はそれでも白雪姫を殺すことを諦めません。次は毒を塗ったリンゴを持って訪れます。

またもや騙されて、毒入りのリンゴを一口食べた白雪姫は、今度こそ絶命します。

そして女王の問いに対して、ついに鏡は「女王様が一番美しい」と答えるのでした。

用心するように言われているにもかかわらず、三度も継母に騙される白雪姫。でも年齢を考えれば無理もないことです。命を狙われた時が七歳ですから、八歳になっていたかどうか・・・。疑うことを知らない少女は、ついに命を落としてしまいます。

ガラスの棺へ、そして王子の城へ

こびとたちは白雪姫の死をたいそう悲しみ、亡骸を囲んで三日三晩泣き明かしました。彼らは白雪姫を埋葬しようとしましたが、生きていた時のままの美しさを保ち続ける白雪姫の亡骸を埋めることができず、ガラスの棺を作ってその中に入れました。そしてその棺を山の上に安置して、毎晩交代で見張ることにしました。

いつまでたっても白雪姫の姿は生きていた時のままで、眠っているようにしか見えませんでした。

ある日、ひとりの王子が道に迷い、七人のこびとの家に辿りついて一夜の宿を求めました。その翌朝に王子は、山の上のガラスの棺に横たわる白雪姫を見て一目惚れしてしまいます。そしてこびとたちに、「白雪姫を私に譲ってほしい。私が生きている限り敬い続け、大切にするから」と頼むのでした。

熱心な王子の頼みに心を動かされたこびとたちは、白雪姫を王子に譲ることにします。王子が家来に命じてガラスの棺を運ばせたところ、家来の一人がつまずいて棺が揺れました。そのはずみで白雪姫の口から毒リンゴのかけらが飛び出して、白雪姫は息を吹き返しました。

生き返った白雪姫に、王子は結婚を申し込み、白雪姫はそれを承諾します。そして二人で王子の国にあるお城へと向かったのでした。

王子と白雪姫の婚礼は盛大に祝われることとなり、宴には継母である女王も呼ばれました。女王が美しく着飾って鏡に尋ねたところ、次のような返事が返ってきました。

「ここでは女王様が一番美しい。でも若い女王様はその千倍も美しい」

腹を立てた女王は、隣国の若い女王をこの目で確かめようと城へ出向き、そこで初めて、若い女王が白雪姫であることを知るのでした。

恐ろしさで動けなくなった継母の女王の前には、火で熱せられて真っ赤になった鉄の靴が置かれました。彼女はその靴を無理やり履かされ、倒れて死ぬまで踊らされました。

ご存知のようにディズニーの『白雪姫』は王子のキスで目覚めます。この設定はディズニー独自のもので、原作のどの版にもありません。

王子のキスで目覚めるおとぎ話で有名なのは『眠れる森の美女』です。ディズニーはこれに倣い、『白雪姫』の復活をロマンティックなものに変えたのでしょう。

なお、原作にも他のバージョンがあります。それは、白雪姫をガラスの棺ごと城へ持ち帰った王子が、どこへ行くにも棺を運ばせるため、それに嫌気がさした家来の一人が棺を蹴飛ばしたところ、白雪姫の口から毒リンゴのかけらが飛び出して息を吹き返したというものです。ロマンのかけらもありませんが、これも原作の1つです。

原作の最も残酷な部分ともいえる継母の女王の最期については、ディズニー作品ではとても採用できる代物ではありませんので、七人のこびとによって追い詰められ、落雷で命を落とすという展開に変えられました。それでも子どもには衝撃が大きく、そのシーンを再現しているTDLのアトラクション「白雪姫と七人のこびと」はかなり怖いと評判です。


原作は原作、ディズニーは別腹です。ディズニーの『白雪姫』が全てではなく、古くから伝わる信賞必罰のストーリーが根底にあるということも、ファンとしては知っておくべきだと思います。

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